乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

カウタイムバジェットと仕事の時間管理

今日は、久しぶりに東京出張。

日帰りである中高一貫校に出前授業です。
(日帰りは50を過ぎた身にはこたえます・・・)
人の流れも戻って、空港内もけっこうな人が出ています。

 

さて、牛の1日は、安定的なリズムが刻まれています。

搾乳が1.5時間×2回(3時間)、採食に300分(5時間)、反芻に8~9時間(480分~540分)となり、これらを合計すると16~17時間になります。

 

牛は1日に11時~12時間横になるので、寝ながら反芻する時間(反芻全体の4分の3が寝た反芻だとすると6~7時間)に加えて、4~5時間は何もせず眠るように横になっていることになります。

これらを全部足すと、20~22時間になってしまいます。

このような考え方をカウタイムバジェットといいます。

 

ウシが必要な時間を計算すると、1日に残された時間は数時間しかありません。


この中に、繁殖検診、飲水や歩行、仲間とのコミュニケーション、削蹄や治療、場合によっては共進会の調教などが入ってきます。

 

乳牛は予定をこなすのに忙しい、さながら猛烈ビジネスパーソンのようです。

あまりに予定が詰め込まれすぎると(詰め込むのは人ですが)、牛は横になる時間を削ります。


ある研究によると、横になる時間が1時間減るごとに一定の割合で1日の乳生産が減るそうです(0.3kg/dの減だったように記憶しています)。

 

忙しくて睡眠時間を削るのは、ビジネスパーソンの多くも同様かもしれません。

 

僕の酪農の師匠の一人であるエムさんは「1日は24時間しかない」と常々おっしゃります。ゆとりのある時間がないと、楽しい仕事はできないとも。

 

僕もそれは如実に実感しています。

最近はメールの件数も増えていますが、常に判断や決断が迫られる「重たい」メールが各段に増えました。


さらに、ここ数年、学生とラインで連絡を取るようになりました。学生からすると、気軽に連絡が取れるので、学生サービスという点で向上したことは確実だと思います。

ですが、SNSは夜でも休日でも24時間営業。
学生からの問いかけはのべつ幕なく教員に届きます。

 

僕たちの学類は一人1研究室です。
教員は領収書の管理や事務的な書類作成まで全て一人で処理しなければいけません。

睡眠時間を6時間は切らないように調整していると、オーバーフローしてしまう案件が増えてきています。

 

忙しいと乳牛は乳量を減らして対応しますが、ヒトは何を減らすのでしょうか?

健康?家族との時間?趣味の時間?幸せ?

 

僕の尊敬する池波正太郎先生は「人は毎日死に近づいている」と何度も繰り返し書いています。

 

仕事に命をかけても仕方ありません。

優先順位を考えて、断る勇気も必要ですね。

 

根室風蓮湖でワシ(トンビ?)を観ました。

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