今日、明日と帯広で、繁殖と栄養学をメインとした、酪農セミナーに参加しています。
このセミナーは、全酪連が主催する、全国規模のセミナーで、毎年開催されます。
講師は、毎回アメリカでの一流研究者が務めます。
今回は、ブラジル人でイリノイ大学の先生です。
(泉の独り言:日本人の乳牛栄養学者で、ここまでの規模のセミナーを動かせる人材はいないでしょう。乳牛栄養学を研究する身として、アメリカの技術が席巻する現状を歯がゆく思っています。そのためには、力をつけないとダメですね)
繁殖学は、栄養学と密接に関係しています。
しかし、私は、繁殖学については素人です。
素人であるがゆえに、今日は、いくつもおもしろい発見がありました。
<分娩後、子宮は何日後に妊娠可能な状態に回復するのか?>
赤ちゃんを産んだばかりの子宮と、妊娠可能な子宮、その違いは何かわかりますか?
それは、大きさでした。
分娩後、45日くらいを経過すると、子宮は再度妊娠可能な状態に回復する、ということは、教科書的に知っていました。
今日は、その根拠が写真で示されました。
乳牛の場合、分娩直後の子宮は85cmの長さがあります。
それが、日に日に縮んでいき、20日後には25cmくらいにまで縮むのです。
ここまで縮んだ後に、子宮が次の排卵や受胎の最終準備が整います。
確かに、子牛が入っていたのだから、子宮は巨大化していますよね。
理屈ではわかっていても、実際に目にすると、子宮という筋肉の柔軟性に驚きました。
子宮が回復する(縮む)ことには、筋肉の収縮が関係しています。
筋肉の収縮には、血液中のCa(カルシウム)濃度が関係しています。
血中Ca濃度が低いと、筋肉が収縮する力が弱まります。
そうなると、子宮の回復にも時間がかかります。
したがって、分娩後、速やかに子宮を回復させ、再び妊娠させるためには、血中Ca濃度を適切に保つことが必要になるのです。
分娩後に血中Ca濃度を適切に保つためには、分娩前の飼料管理が重要になります。
<妊娠が継続するには、元気な卵子が必要>
さて、妊娠するためには、健康な卵子が必要です。
卵子が健康だと、精子と受精した後に、立派な胚(受精卵)に育ちます。
立派な胚とは、大きく活力に満ちた胚のことです。
こういった元気な胚は、子宮内で、インターフェロン・タウという物質を出します。
この物質は、母さん(子宮)に、「ボクはここにいるよ。流産しないでね」という信号を出すそうです。
この信号が弱いと、子宮は、胚が子宮に着床したと気がつかず、間違って流産してしまうようなのです。
健康な卵子を排卵するためには、母親の栄養状態が悪くないことが、まずは大切です。
その上で、健康な受精卵(胚)が、元気な信号を出すことも必要なのです。
普段、エサのことばかり考えている、自分としては、刺激に満ちたセミナーでした。
子宮や卵子の栄養についても、今後は勉強を継続し、守備範囲に加えていきたいと、思います。
対象はウシですが、ヒトにも通じる、興味深いセミナーでした。
2日目の明日も楽しみです。