乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

グラスサイレージ開封(2016年産)

牛のエサ設計の見直しをしました。

 

ウシのエサ設計(メニュー)はこまめに修正します。特に、エサのロットが大きく変わったときには大幅な見直しになります。エサのメニューが変わると、途端に体調を崩すウシがいたり、乳量が減ってしまったりするので、気の抜けない緊張する作業です。何年たってもゆるくないです。

 

大学内では、ウシのエサとして牧草とトウモロコシを栽培しています。写真はまだ若いトウモロコシ畑と管理作業実習をする学生たちです。

牧草やトウモロコシのようなタイプのエサは粗飼料といいます。ウシは粗飼料の他に、穀物などの濃厚飼料やおからやフスマのような副産物もメインのエサとして摂取します。

 

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粗飼料は夏から秋にかけて収穫して、翌年までの一年分を農場内に確保します。粗飼料の保存方法は二通りで、一つは乾草、いわゆる干し草として保存する方法です。もう一つがサイレージといって、乳酸菌の力を借りて貯蔵する方法があり、本学ではこちらをメインにしています。

乳酸菌は自然界に普通に存在していますが、発酵すると乳酸を出します。乳酸は強めの酸なので、乳酸発酵した食品は酸性になり腐敗しにくくなります。乳酸発酵食品はヨーグルト、キムチなど身近にたくさんあります。

 

そこで、粗飼料も乳酸発酵させて貯蔵するわけです。このできあがったものをサイレージといいます。いってみれば、粗飼料のキムチですね。

貯蔵する場所は何通りかありますが、今回の話しではコンクリートでつくられているバンカーサイロに貯蔵したサイレージが対象です。

 

先日、今まで使っていた牧草(グラス)サイレージバンカーサイロがなくなったので、新しいサイロを開封し、業者さんに栄養価を分析してもらいました。2016年産の一番草になります。※牧草は北海道では年間2~3回収穫しますが、その最初の収穫を一番草と呼びます。

その結果、グラスサイレージ中のエネルギー含量を表すTDNという値が62.8%(地区平均56.9%)、サイレージの発酵品質を表すVスコアという項目が97.7点(100点満点)と、極めて高い値となりました。これまでにない、好成績です。

本学農場の技師やサポートしてくれた教員の努力のたまものです。すごい!

 

このエサの品質は、酪農を生業としているプロの酪農家にも負けない優秀な品質です。品質が良すぎるために、サイロが切り替わってからはウシが食べ過ぎて困るほどです。というのも、在庫をみながら1年を通してサイレージの給与量を調整しなくてはいけないからです。ウシが食べるからといって、むやみに与える量を増やすと、1年間持たずにショートしてしまいます。ですから食べ過ぎについては、副産物飼料とロール状に収穫した牧草サイレージを追加で与えることで対応しました。

 

今回は自画自賛が入ってしましましたが、本学農場スタッフ(正式名称は酪農学園フィールド教育研究センターと長いです)の仕事ぶりを紹介しました。