おばんです。
ブログタイトルでは乳牛と酪農を科学するとうたっていますが、日々の雑感が多く、あまりアカデミックな話しになっていませんでした。少し反省して、酪農科学の学びについても触れたいと思います。
まずはしばらくご無沙汰していた乳牛のエサ設計の話しを、やりたいとおもいます。今日はタンパク質栄養についてです。タンパク質栄養は難しく、現在も最新の研究がおこなわれています。講義でも時間をかけて解説しますが、学生たちのテストの点はかんばしくありません。。。
そんなわけで、わかりやすい解説を心がけます。
タンパク質栄養
乳牛の飼料設計、すなわちエサのメニュー作りには栄養学的に太い柱が2本あります。一つは以前お話ししたエネルギーで、もう一つはタンパク質です。まずはこの2つを理解し、自在に操れるようになると、乳牛のエサメニューの基本は組むことができるようになります。その上、私たちヒトの食事でも栄養面を意識できるようになるので、毎日の食事がより一層楽しくなるでしょう。
タンパク質を多く含む飼料は?
タンパク質が多く含まれる食品をあげてみましょう!
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いくつ思い浮かんだでしょうか。
肉、魚、牛乳・乳生産、卵…
そうですね、こういった動物性の食品は高タンパク質食品の代表選手です。
しかし、ウシはBSE(狂牛病)確認以来、動物性の飼料給与は禁止されていますので、植物性の飼料からタンパク質を与えなくてはいけません。植物性で高タンパクといえば…
大豆です。
大豆は畑の肉なんて言われます。
ウシの飼料向けでは大豆そのものを給与するケースは少ないです。一般的には、大豆から調味料として広く使われるある成分を取り除いた後の粕をエサとして利用します。
大豆に含まれるポピュラーな成分とは、油です。
大豆をはじめとする豆類には油が多く含まれています。私たちが毎日のように使っているサラダ油には大豆由来の油が多く使われています。
大豆から油を搾ると、残りの粕(大豆粕)にはタンパク質が凝縮されます。
大豆粕はタンパク含量が40%と高いので、乳牛にとっては貴重な植物性タンパク質源になります。
タンパク質を分解する
ここからはタンパク質の構造について話を進めます。
タンパク質は、アミノ酸がいくつも連結してできたものです。
アミノ酸とは窒素を含む栄養素で、タンパク質合成に関係するものは20種類あります。
食品や飼料に含まれるタンパク質が分解(消化)されるときは、アミノ酸同士の連結部分を切ってやる必要が生じます。
ヒトでは、タンパク質は胃や十二指腸、小腸で分泌される消化液で分解(消化)されます。タンパク質をチョキチョキと切っていき、アミノ酸にまで分解ることができると、小腸から吸収可能となります。吸収されたアミノ酸は血液に乗って体内をめぐり、必要とされる場所でタンパク質に再合成されます。
小腸には小さな物質を体内に取り込む仕組みがあります。しかし、タンパク質そのままでは大きすぎて取り込むことができません。そのため、一度、低分子であるアミノ酸にまで分解する必要があるのです。アミノ酸にまで分解してしまえば、それらを使って全く別のタンパク質を作ることができます。
レゴで作った船を壊して次は自動車を作る、みたいなイメージです。
しかし、ここで自動車を作るためには、ひとつ大きな問題が生じます。
制限アミノ酸
それが制限ミノ酸です。
目の前に船レゴがあります。これを個別のピースにまで分解して車を作りたいのですが、タイヤがありません!!
ここで、我が家の4歳の息子はガッカリしてしまいます(^-^)
このタイヤにあたるアミノ酸を制限アミノ酸といいます(ヒトでは必須アミノ酸ともいいます)。最も不足しがちな制限アミノ酸がないばかりに、作りたいタンパク質が作れないのです。
アミノ酸は20種類くらいありますが、飼料によって何が制限アミノ酸になるかは異なります。一般にはメチオニンやリジンといったアミノ酸が制限アミノ酸になります。ただ、動物性タンパク質には、すべてのアミノ酸がバランスよく含まれていることが多いです。逆に、植物性タンパク質はアミノ酸のバランスが悪く、動物性と比べるとかたよりがみられます。
動物性レゴセットと植物性レゴセットがあると仮定します。レゴのタイヤパーツをゲットするのに、動物性レゴセットだと1セットの中にタイヤが4個入っているのに、植物性レゴセットだと1個しか入っていないため、4セット買わないといけない、みたいな感じです。
ここまでで、タンパク質とアミノ酸の関係、アミノ酸にはレアものがあるということ、アミノ酸は小腸で吸収されることが、理解いただけたでしょうか。
次は、牛の胃袋(ルーメン)とタンパク質栄養に入ります。