乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

同じ酪農とは思えない! カナダのヤギ酪農

今夏のアルバータ大学訪問。
教授の大場先生に案内いただき、ヤギ農場を訪問しました。


カナダ西部のカルガリーから北に数時間走ったところにある農場でした。

 

この農場では、520頭のヤギからミルクを搾り、出荷しています。
また、自農場でチーズ製造もしていました。

 

ヤギは白ヤギと茶色のヤギがいました。
白ヤギは乳量が多いのですが、寒さに弱いそうです(さすが、カナダ。寒さ対策が重要課題とのことでした)。


茶ヤギは、白ヤギとは逆で、乳量は少ないながらも、耐寒性にすぐれているとのことでした。

 

子ヤギは、自動哺乳機で管理していました。
子畜を、群で管理して、機械で哺乳するのは、乳牛の子牛と似ていました。

一方、子ヤギにはミルクを好きなだけ飲ませるというのは、ミルクの寮を制限して哺乳する乳牛とは異なる点でした。

 

子ヤギは8~10ヵ月齢で授精し(雄ヤギによる本交)、妊娠期間5ヵ月で分娩します。
つまり、ヤギは、早ければ13ヵ月齢で搾乳を開始することになります。

雄ヤギは、数十頭の雌山羊の中に、1頭だけ入れられているのですが、暑い夏場は、働きが悪くなるそうです(^^;)

そんなときは、若い雄ヤギを同じ群れに入れてやると、若い者に負けないようにとがんばるそうです。

 

エサは、基本的にTMRでした。

 

今回の視察、驚愕すべきは、ヤギの搾乳期間でした。

1頭のヤギは、1日にどれくらいミルクを生産し、1泌乳期間でどれくらいの乳を生産すると思いますか?

 

1日の乳生産量は、平均すると2kg程度、多いヤギでは5~6kgとのこと。
ヤギは、同時に90頭が搾れるロータリーミルキングパーラーで搾乳されていました。

パーラー内で濃厚飼料を給与するので、ヤギはすんなりパーラー内に侵入してきます。

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問題の、搾乳期間です。


なんと、この農場では、ヤギが一度分娩すると、特に異常がなければ、4~5年間搾り続けるそうです。(乳牛は、通常1年弱)

 

実際、この日の搾乳ヤギは、泌乳日数が1000日超えが珍しくなく、1500日超えもいました。

 

乳量の多いヤギでは、1泌乳期で4000kg以上の乳量になるそうです。

なぜヤギ搾乳は、こうも独特なのかと問うと、農場主はこう答えてくれました。

 

「ヤギは双子分娩が多く、分娩時に事故や代謝病が多発する。また、乳量は分娩後増えるが、極端に減っていくことはない。だから、分娩というリスキーなイベントをできるだけ除外して、安定した生産を続けるのが理想的である」

 

なるほど~
ヤギ酪農は、乳牛では考えられない、ユニークなシステムでした。

 

ミルキングパーラーの出口も極めてユニークでした。

ヤギは、エサが食べたくて、搾乳が終わってもパーラーに戻ってくるそうです。

そこで、搾乳後のヤギの逆進入を防止するために、パーラー出口が崖のように急なスロープになっていました。

ヤギは、そこからピョンピョンと飛び降りて、畜舎に戻っていくのです(^^;)

ヤギって高いところが好きですから、なんともないのですね。

 

DIY好きの農場主、自分で作ったログハウスと、その中に併設されたバーなどくつろぎの空間を案内してくれたりと、生活をエンジョイしている様子でした。

 

何から何までスケールが大きく、魅力的な農場でした。

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