今日は朝イチで講義を済ませ、札幌の酪農セミナーに参加してきました。
ちなみに、今朝の講義は、2年生に対しての研究室紹介でした。
今日は私を含めて3研究室の紹介がありました。
私が乳牛栄養学、あとの二人の先生は社会科学と人文科学系でした。
社会学系の先生は食文化などを統計的に解析しており、人文科学系の研究室ではジェンダーや差別、宗教などを研究していました。
私の属する循環農学類は、多様な研究室があるなと改めて実感しました。
さて、酪農セミナーです。
講師はアメリカの大学教員で、
・ミルキングパーラーの種類・サイズと泌乳牛群のサイズの科学的算出法
・牛舎レイアウトや配置、通路幅とその数
・牛床のサイズ、敷料、パーティション
・飼槽の構造
・換気の種類と空気の流れ
といったテーマでした。
セミナー修了後、講師に二つの質問をしました。
日本では敷料のコストも無視できません。
敷料の使用量を最小限に抑えたいが、どういった指標で敷料の過不足を判断すれば良いのかというものでした。
講師の回答はこうでした。
搾乳牛の横臥時間は、1日12時間が理想である。牛床の快適性・安楽性が失われると、牛は寝なくなり、横臥時間が短くなる。したがって、横臥時間を計測できるならば、それを指標とするのが良いということでした。最低でも11時間は欲しいという回答でした。
※講師のスライドでは、スライドではゴムマットや敷料を入れたコンクリートと比べて、ウォーターベッドタイプのマットでは横臥時間が短いという研究成果が紹介されていました。牛が寝起きのとき、ウォータベッド内の水が動いてしまい、コンクリートに足や膝が直接当たってしまうからだろうということでした。
敷料の考え方として、別の側面では、後肢飛節のスレ防止です。
牛床の安楽性がないと、体の下になる飛節部分は毛がむしれ、皮膚がすれ、傷が付きます。これは、アニマルウェルフェア(家畜福祉)の観点から、好ましくないという考えが欧米では一般化しているそうです。
敷料の適正量については、コストとの兼ね合いもあるので、本学農場でも検討が必要な課題です。
もう一つの質問は、牛床通路にゴムマットを敷くことの是非です。
講師の考えでは、三つの理由から推奨しないということでした。
・ゴムマットはコンクリート床よりも滑る(これは意外でした)
・コムマットは必ず劣化する。マットが部分的に劣化したときに、そこだけ補修・交換することができない。ゆえに、ボロボロになるまでは放置されがちである
・牛床の状態が悪いときは、ゴムマットの上に寝てしまう牛が出る。これはアニマルウェルフェアの観点から避けなくてはいけない。
最近の牛舎では、牛床通路にゴムマットを設置することが珍しくありませんが、メリットとデメリットを理解して決断することが必要なようです。
今日の講師は、換気に流体力学の理論を活かした解析手法を紹介するなど、最新の知見が多数盛り込まれていました。
栄養学が専門の私には、新鮮な発見があり、刺激を受けたセミナーでした。