乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

人的資源をくっつける人間接着剤

先週の土曜日、週末ですが外部講師を招いての特別実習を開催しました。

 

今回お呼びしたのは、僕の酪農の師匠のお一人、Kさんです。また、スペシャルゲストとして、現役農業改良普及員のIさんとTさんも、休みを利用してプライベートで参加してくれました。

彼らは二人とも本学のOBです。

この他に、一緒に共同で研究を進めている獣医学類のF准教授も飛び入り参加してくれました。

 

学生の参加者は3名と少なかったですが、一流の酪農人との密接な時間は何よりの学びになったことでしょう。

 

講義・実習のテーマは「ルミノロジーと牛舎施設」という、一見するとつながりのない二つのキーワードを並べたものでした。

 

ですが、実戦経験豊富なKさんの手にかかると、二つの項目が密接に結びついていることが良く理解できました。

・ルーメンは微生物による連続発酵槽

・連続発酵を止めないためには微生物のエサを供給し続けなくてはいけない

・発酵槽が汚れないようにきれいな水で希釈し続けなければいけない

・微生物が流れ出すぎて枯渇しないように、彼らのすみかを提供しなければいけない(これがルーメンマット)

・微生物のエサや水を供給するためには、発酵槽の持ち主であるウシがいつでも食べたり飲んだりできなければいけない

・そのためには牛舎施設の構造が重要になる

 

といった、流れがわかりやすいスライドやバーンミーティングを通して、理路整然と解説されたというわけです。

 

このテーマ自体は、僕からのリクエストですが、さすがの熟練の料理法にうならされました。

 

講義の後半では、牛舎施設を建築する際には、栄養学、行動学、管理学などの幅広い最新技術を集結しなければ良いのものができない。それらを、自分の力だけで構築しようとしても限界がある。したがって、その道のプロを頼って、アドバイスを受けることが失敗のリスクを減らす最も確実な近道である、といった話題に発展しました。

 

プロフェッショナルを探すためには人的資源を常に意識して、それらの人脈を活用することが重要になります。

僕のもう一人の師匠であるMさんは、優秀な大勢の酪農人を僕に紹介してくれましたが(Kさんもそのお一人です)、彼の名言の一つに「人間接着剤」という言葉があります。

 

今回の現役普及員のお一人とはKさんの紹介で知り合うことができました。F先生も、3人の酪農人とは初対面でした。もちろん学生たちも。

 

こういった出会いを提供したり、されたりしながら、人的資源の輪が広がっていきます。

昨日は、僕の友人のO獣医師とゼミ卒業生で農業改良普及員のIさんとともに食事をしました。同じ地域で働く彼らには、これからも仲良くお付き合いいただけると紹介した甲斐があります。

 

残念なことに人間接着剤は乾けばがっちりと双方をくっつけてくれますが、乾くまでには時間がかかります。
場合によっては乾く前に、双方が離れてしまうこともあります。
人間接着剤を乾かすには、ドライヤーの温風を当てるような努力が欠かせません。

一期一会の出会い、くれぐれも人間接着剤を乾かす努力を怠りませんように。。。