先週末、道東の中標津町で若手獣医師たちに対して栄養学の講義をしてきました。
これまで、十勝の獣医師とは一緒に勉強したことがありますが、さらに東の根室地区は初めてです。
勉強会は1時間も予定時間を超過して、熱のこもった講義となりました。
今回のメインは、ルーメン(第一胃)の健康を意識した栄養学ということでした。
ルーメンの健康が損なわれるときというのは、すなわちpHが酸性が強くなったとき、すなわちルーメンアシドーシス状態の時です。
ルーメンアシドーシスは、SARAともいいますが、乳牛の飼料管理では避けて通れないテーマです。
健康なルーメン内部では、微生物が活発に活動しています。ルーメン微生物が快適な環境とは、ルーメン液のpHが中性~弱酸性のときです(具体的には6以上)。
一方で、ルーメン微生物が飼料を消化する過程で作られる酸が蓄積するとルーメンpHは低下してしまいます。
pHが低下すると、微生物たちは生きていくことができません。
ルーメン微生物は自らつくり出した酸によって、自らの活動を弱めてしまうのです。
そんな講義を、質問に答えたり、脱線しながら、3時間行ってきました。
その後の交流会では、間もなく10年になろうかという中堅獣医師と、1年目、すなわち勤めて1ヵ月ちょっとのホヤホヤ獣医師のみなさんと、様々な話題を楽しみました。
中堅獣医師の「大人」の話題も興味深かったですが、今回の大収穫は、個性豊かな1年生獣医師たちでした。
会場の隅っこに、独特なオーラを醸し出していた1年生グループがいました。彼らに近づいて、話しかけたところ、爆笑せずにいられない、ぶっ飛んだ経歴や武勇伝の持ち主でした。
その上、皆一様に回り道をしていて、歳も食っていました。
獣医学部というと難関です。
したがって、獣医師というとエリートなイメージが強いですよね。
(実は、私も現役受験では獣医学部を受けて落ちてしまい、浪人生活を送ることになりました(^^;))
そんな中、何年も回り道をして、おバカな武勇伝を持っている獣医師はとても異質で、メンコイ若者たちでした。
産業獣医師は、生産者を相手にする職業で、学校で習う勉強だけではない、対人関係力が求められるでしょう。
ピュアな学生を対象とする我々大学教員とは違って、海千山千の農家を相手にするわけですから、タフでなければ勤まらないでしょう。
そういった意味で、優等生なだけではない、ユニークな経歴を持った彼らは生産動物獣医師としてピッタリだと感じました。
サービス業に欠かせない「打たれ強さ」感があふれ出ていたからです。
自虐ネタをどんどん出せる人物は、余計な自尊心がないので、成長も早いですしね。
またいつの日か、彼らと再会して、成長ぶりをみてみたいと思いました。
とても楽しみです。
↓こちらは実習に取り組む大学の1年生