同僚とともに、大学のある江別市の酪農家を訪問しました。
訪問の理由は、牧草サイレージの切断長や発酵品質について視察するためです。
牧草の切断長がなぜ問題になるかという前に、牧草収穫の流れをおさらいします。
牧草を収穫する方法には、次の2通りがあります。
・牧草を短く切ってバンカーサイロに詰める:刻み(細切)サイレージ
・牧草を刈り取るだけで切断しないか、ザクッと粗く切断しただけでロール状に巻いてラッピングする:長ものサイレージ
今回、問題とするのは、一つ目のきざみサイレージです。
刻みサイレージを収穫する際に、どれくらいの長さで切断するかは、ヒトによって意見が分かれます。
牛は、第一胃(ルーメン)を健康に保つためには、反芻しなくてはいけません。
反芻することで、ルーメンの調子を整える唾液が大量に分泌されるからです。
反芻を促すためには、ある程度の長さの牧草(繊維質)を食べさせることが必要です。そうすることで、ルーメンマットができて、反芻が活発化するからです。
この理論を重視すると、牧草を短く切りすぎるのは良くないということになります。
一方で、牧草の中でも茎の部分は堅くて、栄養価も低いので、牛に与えても、食べずに残されてしまいます。
この選り分けを防ぐためには、牧草を短くきざんでやれば、残さず食べてくれます。
子供の嫌いな食べ物を、小さくきざんで料理に混ぜてしまうのと同じ作戦です。
繊維は、短すぎると反芻刺激が弱まるけれど、長すぎると食べてくれない。
ここにジレンマがあります。
本学では、これまで前者の理論を尊重して、ある程度の長さを確保して収穫してきました。
また、機械の関係なのか、どうしても切れずに長い繊維が混ざってしまっていました。
そこで、よそはどのようにしているのかということで、今回の視察となりました。
訪問した酪農家さんのサイレージは、本学よりは短くきざまれていました。
コーンサイレージも、短かったです。
短いと、牛が繊維を残すこともなく、良好だということでした。
ですが、短く切ると収穫の時に問題があるということも会話の中から出てきました。
牧草を短くきざみすぎると、畑で収穫する際に、風で飛んで行ってしまう割合が増えてしまうというのです。
ハーベスターという牧草を切り刻んで回収する機械からダンプに受けるときに吹っ飛び、ダンプで牧場まで運ぶ際にも吹っ飛ぶそうです。
私は、エサを牛に給与したりする、栄養学的な視点からのみ、切断長を考えていました。
そこには、収穫物の歩留まりという発想は欠如していました。
たしかに、天気がよい日に乾いてしまった牧草は、よく風で飛ばされていました。
畑で育てた牧草を、ウシの口に入れずに畑に還元する。。。
ちょっとバカげたお話しです(-_-)
ものごとは、一面からだけではなくて、トータルで考えなくてはいけません。
現物を見ただけでなく、農家の生の声を聴くことで、いくつもの気づきがありました。
現場に足を運ぶことの大切さを実感した一日になりました。
今回のアイデアから、研究テーマのヒントを得ることができました