こんなに観ていて疲れる映画はあったでしょうか。
ヘルシンキへ向かう機中で観た映画が「セッション(原題はWhiplash)」です。
私はジャズが好きで、BGMとして良く聴きます。
この映画はジャズバンドでの師弟関係を描いた映画です。
映画では、音楽学校に入学したドラムに打ち込むドラマーと、鬼教官の熱い、熱すぎる師弟関係が描かれています。
テーマは異なりますが、甲子園に出てプロへのステップアップを目指す高校球児と彼らを指導して勝ち上がることで学校や自らの名誉を得ようとする監督の関係に似ていると感じました。
鬼教官はアメリカの軍隊ものに出てくるような典型的な鬼軍曹タイプです。怒鳴る、罵倒する、ものを投げるとワヤクチャです(さすがに日本の部活動でここまではありませんね)。
しかし、主人公のドラマー志望の学生アンディ(19歳)も狂気という点では負けていません。
若いアンディを観ていて、師弟の関係性に関する日米の違いに目を奪われました。
学生であるアンディも教師に対して意見を言うし、反論もします。学生には、反論するだけの文字通り血のにじむ努力があるので負けていません。教師を見返したい、くそったれという怒りと、恐ろしいまでの上昇志向が、特訓の原動力になっています。
練習に打ち込む主人公の鬼気迫る演技は前半の見所です。
日本の部活動では、甲子園に出るような強豪校でも萬年1回戦敗退高でも、監督(教師)は絶対です。生徒が監督の指導法に食ってかかることはあり得ないのではないでしょうか。部活に限らず、自己主張をせず、行儀の良いお利口さんが良い生徒です(わたしはこの理屈から行くとかなり悪い生徒でした・・・)。
大学でも、指導教官よりも研究の知識を身に付けて、教官の鼻を明かしてやろうなんていう学生もまずお目にかかりません。
自分の上昇志向のためには、友人や恋人も不要というアンディの考えには凄みすら覚えます。そして、一旦袂を分かっていた鬼教師と再会した後のジャズフェスティバル当日のラストの演奏は圧巻です。
約10分間のシーンですが、呼吸をするのも忘れてしまうくらい、息苦しく、疲れる場面が続きます。観ている私も指揮者の鬼教官と同じく手がリズムに合わせて小刻みに動いてしまいました(機中なので、アルコールの切れた危ない人と思われたかもしれません(^^;))。
映画が終わったときはぐったり動けませんでした。
映画館ならしばらく放心状態だったことでしょう。
帰国したら、音楽に精通している妻ともう一度観たいと思わせる映画でした。
進路を考えている中2の息子とも一緒に観ても良いかもしれません。
そういえば、作中でアンディは大学生になっても父親とポップコーンを食べながら映画を一緒に観ていました。
父親と息子、教官と指導学生、立場も接し方も違いましたが、どちらも父性の信頼と愛情が描かれていました。そのような見方もできる映画です。
ただ、とにかく疲れます。。。
寝る前に観ると眠れなくなりますのでご注意ください。