乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

乳牛にセレンというミネラルを使ってみると?

今日は土曜日ですが、またもや帯広出張です。
今月に入っててこれで3度目。
定期券でも買いましょうか(^^;)

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さて、今日は恒例の若手獣医師のみなさんに栄養学の講義です。
今日は脂質、ミネラル(無機質)、ビタミンを講義する予定です。

 

正直、ややマイナーなこの分野は私にとっても専門ではありません。というわけで、項目によっては1から勉強し直したところもあります。

講義やセミナーでお呼びがかかったり原稿依頼をいただいたりということは、こういった意味で講師がもっとも勉強することになり、成長が実感できるありがたい経験です。

 

 

さて、特急待ち時間ですので、ワンポイントだけアウトプットしたいと思います。

 

セレン、というミネラルをご存知ですか?

 

ミネラルというと、カルシウムがもっともなじみが深いのではないでしょうか。塩として身近なNaClも毎日料理に使われます。
これら主要なミネラルはマクロミネラルといって、g単位で大量に摂取しなくてはいけないミネラルです。

 

ミネラルは土壌中に含まれていて、植物体が吸収し、その植物体を食べることで我々はミネラルを体内に取り込みます。
ミネラルは様々な役割体内で果たします。
例えばカルシウムは骨を作りますし、筋肉の収縮にも関係します。

 

一方、セレンのような極微量で必要量をまかなえるミネラルを微量ミネラルといいます。1日にmg単位の摂取でよいものです。

 

さて、前回受講生からセレンについて質問があったので、私も詳しく調べました。

セレンは抗酸化機能を有していて、免疫機能を増強します。分娩間近の牛に投与すると母子共に病気の発症率が低下したという結果が得られています。

 

興味深いことにビタミンEも同様の機能を持っていて、同様の効果が得られます。

 

乳牛にセレンを強化すると、牛乳中に微量のセレンが移行し、その牛乳を飲んだヒトの健康にも効果があるのではないか、という研究報告も見れます。

 

ただ、セレンをはじめとする微量ミネラルは取り過ぎると毒性を発揮します。健康に良いからといって、大量に与えてしまうと逆に中毒症状を示します。

 

セレンは効果がありそうですが、エサの中に十分含まれているケースもあります。地域によって土の中に含まれるセレンの量に差があります。アメリカではこの地域の土壌はセレンを豊富に含む、この地域はセレンが痩せた土地であるといったように、国全体のセレン濃度マップが提供されているそうです。

 

セレンが豊富な地域では、牧草中に十分なセレンが含まれている可能性があるので、追加でセレンを添加すると過剰になってしまう危険性があります。乳牛に使用を考えるときは飼料分析を行い、慎重におこなう必要があるといえるでしょう。