昨日、4年生向けの実習で、酪農の収入について、実際に大学農場を対象に調査しました。
その中で、バカにならない数字となったのが、牛の個体販売による収入です。
酪農場には、ご存知の通り、メス牛しかいません。
オスは、ミルクを生産しないからです。
したがって、オス子牛は、産まれるとすぐに市場に出荷されます。
市場には、オス子牛を買いに、肉牛牧場の生産者が訪れます。
買い取られたオス子牛は、肉牛牧場で育てられ、大きく成長し、やがて牛肉となって消費されます。
さて、先日も紹介しましたが、オス子牛の市場価格が上がっています。
最近では、1頭あたり、13万円程度で売られています。
本学では、年間60頭程度の分娩があり、そのうちの半数がオス子牛です。
単純に計算すると、オス子牛の収入だけで、30頭×13万円という金額です。この規模は、北海道では、平均的といって良いでしょう。
この他に、老齢や身体的理由で、搾乳ができなくなった廃用牛、子を妊娠している分娩前の育成初妊牛、ホルスタインの雌牛に黒毛和牛の精液をかけて交雑したF1子牛といった、牛も、本学では個体販売に回されます。
この中でも、特に高額なのが、初妊牛です。
昨年は、初妊牛の相場が100万円を超えたということが話題に上りました。
直近の十勝の市場でも、98万円の値を付けたそうです。
アフリカのある国だったでしょうか、嫁入り道具(結納品?)に、牛を連れていくという話を読んだことがあります。
あるいは、牛を飼っている頭数が、その家の裕福度を表すという話も目にしたことがあります。
牛は、大食いな上に、草を食べさせないといけないので、家畜化の歴史は浅い方です。
ずいぶん前ですが、ニュージーランドで買い求めた、農業の歴史を描いた絵本があります(外国では、しばしば、このような絵本を目にします。畜産の伝統が感じられますね)。
800年代、1000年代と、人々の暮らしに家畜は描かれていますが、牛は見当たりません。
1200年代になって、ようやく、農作業に使役される牛が描かれるようになります。
牛は、大きく、危険ですし、大量のエサを消費します。
そんな動物を、家畜として飼うためには、財力や土地の力、牧畜の技術などが、必要になるのでしょう。
そういったものを有している、それがすなわち、ステータスというものなのかもしれません。
古今東西、牛は財産なのですね。