乳牛は、子を産ませ、乳を搾るための家畜です。
しかし、老齢になり、妊娠ができなくなると、子を産めない身体になります。
子を産めないので、当然、乳を搾ることもできません。
ヒトもある年齢を過ぎると、子をもうけることが難しくなるように、ウシも同様です。
酪農家は、経営的に、牧場内に搾乳できない牛を置いておく余裕はありません。牛舎の収用頭数には限りがあるので、乳を搾れる牛だけで常に満員にしておきたいからです。
このような牛たちは、廃用牛と呼ばれ、市場に出荷されていくことになります。
出荷された老齢牛(廃用牛)は、最終的には、肉用として一生を終えます。
しかし、廃用牛は、乳を搾ることに専念していたため、肉質はよくありません。
同じことは、タマゴを産ませるための採卵鶏にも当てはまります。
これらの家畜は、肉質は堅く、食肉として利用できる部位もごくわずかしかとれません。
廃用牛の肉は、ヒト用であればひき肉として利用されるのが一般的なので、酪農家が廃用牛を売った手取りは安いものです。
先日の日本農業新聞(10/22付け)に、「乳廃用牛 赤身肉で脚光 輸入と対抗・・・商機」という特集記事が組まれていました。
宮崎県の肉牛農家の事例が紹介されていました。
この牧場では、乳廃用牛を市場から安く買ってきて、穀物を与えて6~10ヵ月再肥育することで肉質が柔らかくなり、採れる肉の量も多くなるということです。
こうすることで、売値も従来と比べて「1kg900円(枝肉)に高めること」が可能になるそうです。
同様に、食肉メーカーも、亜麻仁(アマニ)を含む飼料を与えることで、廃用牛に付加価値を付けて販売に取り組んでいることも紹介されていました。
誌面とは関係ありませんが、アマニにはオメガ3脂肪酸という機能性物質が含まれており、私も企業との共同研究で取り組んだことがあります。これについては、いつか紹介したいと思います。
誌面では、赤身中心の大きなステーキ部位の塊肉が写真で紹介されていました。
霜降りとは違った意味で、食欲をそそる色合いです。
何もしないで売れば二束三文であっても、知恵と手間を加えることで、おもしろいビジネスに発展する。
そんな興味深い事例紹介でした。