乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

酪農セミナー:経済学的発想と知的ゲーム

 

今日は札幌で酪農関係のセミナーに参加してきました。
昼食に地下街で丼物を食べました。
大盛り無料と言われてつい「お願いします」とうなずいてしまう。
また妻に怒られる(^^;)

 

今日の一枚は関係のないある日の昼食です。。。

 

終わりなき旅のような話題展開

 

セミナーは「牛のデータから学ぶ管理の要点」というタイトルで菊地実講師の講義でした。

 

菊地先生は単なる技術論ではなく、聞いている側のレベルによって受け取り方が異なるであろう奥深い講義をする方です。
長年、彼のセミナーを追っかけていますが、今日も新しい切り口のお話にワクワクが止まりませんでした。

彼のような本質を突く議論や、切り口や見る角度にとらわれない独自の発想は、私の中の究極の目標です。いつになったら彼の境地にたどり着けるかわかりませんが、たくさんの本を読み、多くの人の考え方に触れて、柔軟性を今以上に見つけなくてはいけないと気が引き締まりました。

 

例によって気づきを3点。

今日は3つに絞ることができないくらい多くの気づきがありましたが、あえて3点。

 

1.経営と投資の考え方
機会費用
・機会損失
逸失利益
・比較優位

 

これ、自分にはなかった発想です。したがって、ぼんやりとしかわかりませんでした。ただ、投資の大切さは伝わってきました。酪農の現場では、投資をすることで得られているであろう利益を失っていることがなんと多いことか。


全部自分でやろうとすることのナンセンスさを菊地先生お得意の経済学の観点から解説してくれました。

 

「一人あたりの年間搾乳量が320トンが儲けられるかどうかの臨界点、がっつり稼ぐために500トンに持って行くのが最終目標」
1時間あたりの一人あたり搾乳量なんていう考え方も斬新でした。

栄養屋は、ややもすると技術論に走りがちですが、経済学の視点を入れるともっと稼げるポイントはもっとたくさんあるということがわかりました。

このような考え方については、これからもっと勉強です。

 

2.牛飼いの優先順位
 1.安楽性
 2.管理
 3.栄養

ウシの不調はどんな分野でもエサせいにされがちです。栄養屋をやってきて、若い頃(今でもときたまありますが)、エサが悪いからだと言われるのがとても苦しかったです。言う方は一番手っ取り早いのでしょうが。

 

ですが、菊地先生は、まずは「安楽性」つまり牛の身体に傷がないことを最優先せよと言っていました。
傷ができる→炎症を起こしている→免疫反応にエネルギーが割かれている→乳量が下がる

という理論です。

 

「管理」は飼槽をきれいにする、きれいな水を飲ませるといったことです。これは採食量を増やすことにつながります。
乾物採食量1kgで乳量2kgの効果があります。

 

「栄養」も、粗飼料の品質が最も重要で、小手先に走るなということを強調していました。栄養分析も、乾物率、CP(粗タンパク質)、NDF(総繊維)、K+発酵品質を最低限押さえなさい清さ。

 

別の言い方で
NONDE
KUTTE
GORORI
とおっしゃってもいました(^^ )

 

3.わらしべ長者のような理論展開
外国と日本のサイレージのNDF含量の差から、よくもここまで幅広い話に持って行けるなという理論展開を披露してくれました。
ここまで行くと、話芸といっても良いのではないかと感心します。

NDF含量の差→リグニン含量の差→ルーメン内酢酸産生量の差→エネルギー供給量の差→乳量、免疫、繁殖などに差が生じる
これらの差は牧草地の更新年限4~5年(日本8~10年)、刈り取り回数4~5回(日本2~3回)の違いに起因→機会損失と遺失利益

 

意表を突く理論展開に、私の頭もオーバーヒートしましたが、もっと勉強したくなると思わせる知的ゲームのような半日でした。

 

疲れたけど、心地よかったです。

帰宅後、家族で娘のDVDの「ズーとピア」を観ました。