乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

畜産物とマーケティング 売り方次第で、何でもばける

昨夜の未来世紀ジパングは、牛肉特集でした。
中国や東南アジア諸国で、牛肉の消費が急増しており、それにともない日本でも牛肉の価格が上昇しているという内容でした。

 

番組の内容は、やや一面的な切り口で、専門家からするとツッコミどころが随所にみられました。

 

それはさておき、牛肉のマーケティングについて、昨日は考えさせられました。

 

生産者が、ウシの生産(飼育)コストをギリギリまで下げる工夫をしていただけのことを、逆に牛肉の味や質の決め手となる長所(付加価値)として、価格に上乗せして高値で売るというものです。

 

昨日のテーマは、グラスフェッドで育てられた牛の肉でした。

 

グラスフェッド(Grass fed)とは、牧草だけで育てられた牛の肉という意味で、究極の飼料費削減型の飼育方法です。日本語では、牧草肥育といえばよいでしょう。

牛肉を安価で輸出したいニュージーランドや南米で行われている技術です。

 

穀物を与えず、放牧のみで飼育するので、飼育・飼料コストが圧倒的にかかりません。従って、牛肉も圧倒的に安く、生産できます。

人口が少ない代わりに、広い国土を有する国々では、海外に畜産物を売らねばなりません。牧草肥育は、そのような国々で、国際競争力を付けるためにとられてきた、コストダウンの戦略です。

 

このような牛肉は、赤身中心で霜降りにならないために、堅くておいしくないということで、これまでは見向きもされていませんでした。

 

対極にあるのが、穀物肥育の牛肉です。
和牛をはじめとする国産牛肉はこのような飼い方ですし、アメリカなど外国でも一般的な飼い方です。


脂肪交雑(霜降り)が入り、柔らかく、脂肪の旨みが強い肉になります。

 

牛肉の価格ですが、牧草肥育の牛肉は、穀物肥育と比べて、破格の安値になります。

私がニュージーランドで目にしたときも、牛肉は、豚肉や鶏肉とほぼ同じ価格で売られていました。

昨夜の番組では、サーロインのような高級部位でも、100gで200円程度でした。

 

しかし、それを日本にもってきて、東京の一等地で、おしゃれかつヘルシーな戦略で売り出すと、高級品に一変していました。

 

まさに目からウロコでした。
発想を転換したマーケティングによって、いくらでもビジネスが成り立つという、劇的な事例を、昨夜は目にしました。

↓NZの放牧風景

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