「ガイアの夜明け」が、またやってくれました。
昨夜、またまた、「ガイアの夜明け」が一石を投じる番組を放映しました。
2018年8月14日放送 巨大規制に挑む!~バターの闇 新たな戦い~|日経スペシャル ガイアの夜明け : テレビ東京
酪農家は、自分の所有する乳牛から搾った牛乳を、どのように販売しているのでしょうか?
液体なので、殺菌し、パッケージに詰めるか乳製品に加工しないと、販路に乗せられない牛乳を、個人で売るのはとても難しいことです。
そこで、従来、酪農家は、農協(JA)や、その上部団体であるホクレンなどの指定団体に、牛乳を販売してもらう方式でした。
タンクローリーが、何軒もの酪農家を回って牛乳を回収し、工場に持ち込みます。
このようなルートで回収される牛乳の販売単価(農家が牛乳を売って受け取る金額)は、成分によって変動しますが、基本的には一律です。
このような農協系統の内部で販売を代行してもらうことを、業界ではインサイダーと呼びます。
私が働いていた酪農場の親方は、どれだけ高品質の牛乳を生産しても、タンクローリー内で他の酪農家の牛乳と混ぜられてしまうことを、残念だと語っていました。
どれだけ手間と経費をかけて、衛生的にも栄養価的にも高品質な牛乳を生産しても、それを自分だけの牛乳として売ることができないので、モチベーションの維持が大変だということです。
これは、20年も前の事例ですが、現在、MMJという小さな乳業団体が、巨大な指定団体を通さずに、牛乳を買い上げ、販売する取り組みを始めています。手数料が少ないため、農家の手取りは、多くなります。
マージンが少ないので、MMJが作るバターは、大手が作るよりも破格の安さで販売可能です。
このような独自路線での販売をアウトサイダーと呼びます。
「ガイアの夜明け」では、2年前から、大手指定団体から決別して、自己責任で牛乳販売する、酪農家を追跡報道しています。
今回は、くだんの酪農家に加えて、MMJから牛乳を仕入れることを宣言した途端、資金繰りの面で圧力をかけられ、操業停止に追い込まれてしまった乳業メーカーも取り上げられていました。
この酪農シリーズ、とても興味深い番組です。
努力する弱者が、旧態依然とした権力体制に締め付けられるという、シンプルな図式が、とてもわかりやすく、共感をうみます。
一消費者である妻は、系統のラインから外れて生産、販売を行おうとする酪農家や乳業メーカーに対して、有形無形の圧力がかけられていることを憤慨していました。
専門家である私からすると、番組はあまりに一面的で、農協系統が農家の代わりに多くの雑事を代行してくれ、様々な場面で農家や農村が守られていることを知っています。
系統関係者が悪代官のように描かれており、少々気の毒にもなりました。
ただ、それにしても、時代は大きく、急激に変化しています。
これまでのように、モノを作って売るということに長けていた日本の経済スタイルでは、世界のトップを走ることができなくなっています。
農業などの1次産業も、作る側、売る側、双方が変化を求められている、そんな時代なのかもしれません。
番組の最後に、江口洋介が、この問題を引き続き追いかけると語って終わりました。 続編が楽しみです。