乳牛と酪農を科学する

乳牛と酪農を科学する

乳牛の栄養や酪農システムについて大学教授がつぶやきます

こちらルミノロジー研究室

前から始めたかったブログを始めます。

私の研究生活は、学生時代のめん羊を用いた研究から始まり、今の職場に勤めてから乳牛に研究対象が移り、25年近くになります。この間に学んできたこと、研究に関すること、酪農生産の現場で見聞きする疑問点、私の研究室の活動や教え子たちに関すること、などを綴っていこうと思います。

 

・ルーメンとは?

牛には胃が4つあるのはご存知でしょうか。一番目の胃は巨大な胃袋で、ホルスタインならば約200リットルの容積があるといわれています。この胃袋のことをルーメンといいます。

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追々触れていこうと思いますが、牛のルーメンには多くの機能があります。この機能を最大限発揮することで、牛の持っている潜在能力をフルに引き出すことができます。

 

ちなみにホルスタインとは写真の牛で、白黒の乳牛です。引っ張っているのは当研究室の学生です(^^ )

 

・ルーメンの中には微生物が大量に生息

ルーメンの中には原虫、細菌、真菌類などが無数に存在しています。牛は草を食べますが、エサの中に含まれる繊維質はウシ自身では消化できません。もちろん、私たちヒトも草を食べられませんが、これは牛と同じく繊維質を分解できないからです。この繊維質をルーメンに生息する微生物は分解できます。おまけに、ルーメン微生物は繊維質を分解する過程で牛の栄養源となるガスを生成してくれるので、牛はそのガスを使って自分の生命維持のためのエネルギーを得ることができるのです。牛は草食動物だけど、自分では草を消化できないのです。とても興味深い栄養獲得システムだと思いませんか?

これは牛だけではなく、胃が4つある動物(ヒツジやヤギなど)に共通した仕組みです。

 

牛とルーメンについては、まだまだ興味深い仕組みがありますので、これから少しずつ解説していきたいと思います。